悩みは尽きないけれど

五月晴れが続いてくれたおかげで、洗濯物の乾きが良い。それだけで人の気持ちというのは晴れ上がるものだから現金だ。

花粉に苦しめられることも少なくなった今の時分は、窓を開けて空気の入れ替えを行うので気持ちが良い。何より布団を外干しできるのが最高だ。

何が至高の時間かと聞かれたら、ひたすらに睡眠時間だと答える。日の光に当たってふんわりと膨らんだ布団ほど気持ちのよい睡眠の友はいない。

思考を止めて布団の波へダイブする時ほど、幸せなことがあるだろうか。睡眠の世界は限りなく自由だ。その時間だけは周りの何ものにも左右されない時間を自分だけで堪能できる。

何の心配もなく眠るなんてことはもうないのだろうけれど、それでも睡眠という人生の三分の一を占める時間は、なくてはならないものだ。

子供の時であってもそういえば毎日がそれなりに心配事があった気もする。

明日読む本はどうしようかな。

洋服用意してなかった。

まりちゃんは明日も学校に来るかしら。

算数なんで間違っちゃうのかなあ。

子供は悩みがないなんて言うのは幻想で、精一杯毎日いきているのだから当然悩ましいこともある。むしろ対人間関係においてスキルが乏しい分、悩みは尽きない。

いまこそ笑い話のようだが、私は子供の頃わりに人の言動を気にしやすくて、誰かから強い言葉を浴びせられるたびに、ドキドキとして何が悪かったのかひたすら悔やんだりする子供だった。相手の態度や一挙手一投足にビクビクして、その人の機嫌や顔色をうかがっていた。

幼い頃、本の虫だったせいで自己主張をするだけの言葉を多く持っていたから、表現して発言するのは得意だった。

けれどそれだから周りによく叩かれたし、それを跳ね返す強さも柔軟性もなかったから、よく傷ついた。

むしろ感受性が高く繊細な所が多分にあったので、気に病んで胃が痛くなったり、学校に行きたくなくなったりなんてしょっちゅうだった。

今から考えれば気に食わない相手というのはもう生理的に、おそらく遺伝子レベルで性に合わないもので、中にはそれを覆して逆に仲良くなることもあるのだろうけれど、それは非常に稀なケースだろう。

誰とでも仲良くできる人間がいるように、合う人としか合わない人間だっているのだ。ついでにファーストインプレッションとい うのは年をとれば取るだけ観察力や洞察力が鍛えられることを加味すれば、精度が上がる。それもまた自己防衛なんだろうと思う。

合わない人間だからこそ、合わせるためにどうするのか、合わないなりに相手をどう理解するのか、といったことを考えることができるからだ。

そう考えると大人になってよかったなあと思う。そういうスキルを身につけるにはそれなりの失敗をして、乗り越えたり心折れたりする必要がある。

その時々に大変悩んだものだけど、今はそういうことがあったことにある程度感謝もできるようになった。

今では気が強いですね～、と当たり前のように良くいわれるが、それは後天的に身につけたものだ。もちろん素養はあったのだろうけれど。

それでも心から褒め言葉と受け取ることができるようになったのは、言われはじめてから随分経ってからだ。

だいたいこの仕事をするのにそんな精神ではあっという間に心が壊れてしまうだろう。

事実、心を病む同業者は多いし、カウンセリングに定期的に通っている人もいる。臨床が続けられなくなって、転職したりするケースもある。

臨床に向き不向き、というのは実際にあるし、本当に優しすぎて真面目すぎる人ほど、心の病に取り憑かれることが多い。

無理を重ねて突然死するケースも後を絶たない。若くしてなくなる先生も多い。とても切ないことだ。

ストレスと切っても切れない仕事だし、生死と向き合う過酷な仕事に、ある程度耐久力のある心を作り上げなければ、人間として壊れることは想像に難くない。

人はそれほど、強いいきものではない。そういう意味では動物達のほうがずっとタフだ。

毎日飼い主さんの顔がみられたらとても嬉しい。なでてもらえたらそれだけでハッピーだ。声をかけられ目を見て会話をする。

お散歩にいって友達と会えたらとっても幸せで、ご飯がちゃんともらえたら笑顔になる。一緒にねむること、ただひたすらになでてもらうこと、名前をよんでもらえること、それが史上最高に幸せ、そう思っている。

辛い気持ちの時に寄り添って、一緒に悲しくなってくれることも、こちらが嬉しい時に共感してテンションが上がることも、動物達は全力でしていることだ。

だからどんなに短い時間であっても、どうぞ触れ合って欲しい。

彼らがもつ時間は私たちの時間軸ではとても短い。数分すら一時間以上の体感だと思って欲しい。

多くを望まない彼らは、毎日ほんのちょっとの時間で、幸せになる。 その幸せを与えられるのは、飼い主のあなただけなのだ。

全くお話は変わりますが、春の健康診断は、五月末までです。 ご希望の方はお早めに！