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狂犬病の恐怖
狂犬病の恐怖

気温がぐんぐんとあがり、紫外線の強さも感じる今日この頃。

じりじりと照りつける陽光は、まるで初夏のようですね。昼頃の気温をみれば、もはや25度ごえは珍しくもない東京です。

北海道に住む友人は今はまだ春だといいますが、南にいけばいくほど、春がみじかく夏が長くなったと感じている人が多いようです。

さて、今年初の熱中症疑いは、なんとゴールデンウイーク直前、四月末でした。なんということでしょう。もはや夏の病気じゃなくなっている気もしてきました。

昨年、その前とコラムをふりかえると、なるほど熱中症のはじまりがゴールデンウイーク前後に集中していることが分かります。

温暖化の影響なのか、日本全体が亜熱帯へと近付いているのをみると、そもそも季節に左右される病気の定義が揺らいでくる可能性があります。

例えばフィラリア症のように、蚊が媒介する感染症は蚊の活動時期が大きく関わってきます。蚊の飛ぶ期間が長くなれば予防しなければならない期間もそれに応じて当然延びます。フィラリア症に関しては遠からぬ未来には通年予防が当たり前になることでしょう。

予防薬も毎年様々な新薬が発売され、食べるもの、つけるもの、飲むものと様々です。使いやすさを一番に、きちんと予防していくことが大切です。

予防というのはそもそも、その動物を守るために行うものです。

なぜかまれにワクチンや予防薬一般を毛嫌いしている方にお会いしますが、もう一度何の目的で行っているものなのか、よく考えて頂きたいと思います。

人間の感染症の致死率ランキング
人間の感染症の致死率ランキング

先日少し気になって、人間がかかる病気で、致死率の高いウイルスの感染症を調べてみました。

まとめられているサイトなども多く、やっぱりなあ、という結果だったので、取り上げてみたいと思います。

第五位 鳥インフルエンザ(H5N1ウィルス)

致死率54% 治療法あり(ただし完全ではない) ワクチンあり(ただし制限あり)

第四位 ニパウイルス感染症(NIPAH)

致死率75% 治療法なし 予防ワクチンなし

第三位 マールブルグ出血熱

致死率80% 治療法なし 予防ワクチンなし

第二位 エボラ出血熱(ZEBOV=ザイールエボラ出血熱)

致死率83% 治療法なし 予防ワクチンなし

第一位 狂犬病

致死率100% 治療法なし 予防ワクチンあり

栄えある第一位(と言っていいか分かりませんが)には、狂犬病が輝いております。

狂犬病という名前から、犬だけの病気のようですが、大きな勘違い。すべての哺乳類に感染します。

狂犬病に関しては以前こちらのコラムで書いてあるので、ぜひ参考にされて下さい。
【参考】院長のコラム 2016.04.15 狂犬病予防注射の誤解

もし日本で狂犬病が発生したら
もし日本で狂犬病が発生したら

今まで病気の致死率の問題に触れてきましたが、では現在国内での発生がないといわれている狂犬病が発生した場合、どのような事態になるのでしょうか。

あまり考えたくありませんが、法律的にこれはという所を参照してみます。

ちなみに狂犬病が発生した場合、狂犬病予防法として隔離義務というものがあります。

(隔離義務)

前条第一項(犬、猫その他の動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、鶏及びあひる(次項において「牛等」という。)を除く。)であつて、狂犬病を人に感染させるおそれが高いものとして政令で定めるもの)の犬等を診断した獣医師又はその所有者は、直ちに、その犬等を隔離しなければならない。

ただし、人命に危険があつて緊急やむを得ないときは、殺すことを妨げない。

《改正》平10法115

恐ろしい文言があるのが分かると思います。 緊急でやむ得ない場合、殺処分されても仕方がない、ということです。

またこういった義務もあります。

(公示及びけい留命令等)

第一〇条 都道府県知事は、狂犬病(狂犬病の疑似症を含む。以下この章から第五章まで同じ。)が発生したと認めたときは、直ちに、その旨を公示し、区域及び期間を定めて、その区域内のすべての犬に口輪をかけ、又はこれをけい留することを命じなければならない。

ここで指定される区域は発生したとされる場所を中心に定められますが、該当した区域の場合、感染の有無に関係なく移動制限を受けるということになります。

万が一、感染して亡くなってしまった犬はどうなるのでしょうか?これも法律に記載があります。

(死体の引渡し)

第一二条 第八条第一項に規定する犬等が死んだ場合には、その所有者は、その死体を検査又は解剖のため予防員に引き渡さなければならない。ただし、予防員が許可した場合又はその引取りを必要としない場合は、この限りでない。

遺体を返してもらえないことがある、ということです。死後の病理解剖を断りたくても、断ることはできない可能性があると言うことになります。
また感染した犬は必要があれば、病性鑑定のために行う解剖のため、殺すことができます。

(病性鑑定のための措置)

第一四条 予防員は、政令の定めるところにより、病性鑑定のため必要があるときは、都道府県知事の許可を受けて、犬等の死体を解剖し、または解剖のため狂犬病にかかつた犬等を殺すことができる。 《改正》平10法115

ざっと並べただけでも、法律のなかではかなりきつい言葉で対応策が書かれています。

これは狂犬病が発症した場合限りなく100%死亡するとてつもない恐ろしい感染症であり、万が一蔓延すれば一定数の死者を出すことが世界的にもよく分かっているために、やむを得ず強い規制を敷いている、と考えられます。

法律で犬に課せられているものは、狂犬病ワクチンだけです。

その理由を考えれば当然打ってしかるべき予防注射ですが、残念ながら年々接種率が下がっているという報告もあります。

今一度ワクチンの必要性を考え直して欲しいと思います。

2018-05-31

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