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良い獣医さんって?
良い獣医さんって?

バレンタインデーが終わり、チョコレートの誤食の恐怖は一段落しました。

甘い物はなぜか犬猫関係なく、とても好まれるらしく、誤飲の事故の中でもダントツの『食べてしまったリスト』に入っています。

ほとんどがカカオ濃度の低いものですが、中にはダークチョコレートを主体とした、カカオ濃度の高いものがあり、中毒を引き起こす事がありますので、食べてしまったらなるべく早く病院へご連絡下さい。

来院される際には、食べてしまったものの残骸でも構いませんので、一緒に持ってきて下さいね。とても有用な情報が含まれている場合が多いのです。

hr

さて、今日はちょっとどっきりするお話。

先日、友人と話していた時に「いい獣医さんってどうやって見分けるの?」というかなりパンチ力のある質問を貰いました。

彼女は中高の同級生ですので、遠慮のない物言いも納得なのですが。ここで問題になるのは、「いい獣医さん」という言葉が何を差しているのか?という事になります。

「いい獣医さん」の定義は、様々です。

「技術力がある獣医さん」「大型の設備が整っている獣医さん」「料金が安い獣医さん」「話しやすい獣医さん」「知識と経験がたくさんある獣医さん」「サービスや営業時間が豊富な獣医さん」などなど。

箇条書きにすると分かりますが、こういったものがバランスよく組み合わされ、その判断をする飼い主さんの価値基準にあった獣医さんが、その人の「いい獣医さん」になる訳です。

ですから、彼女にとっていい獣医さんが、同じように他の人にとっていい獣医さんになるかどうか、というのは分かりません。

何に最優先の価値をおくかによって変わるよね、という話になりました。

するともう一つ質問が。

「じゃあ、獣医さんに好かれる飼い主さんって、どうやってなればいいの?」

これはさらに爆弾発言ですね。前述の質問は結構受けるものですが、後者の質問は初めてでした。

聞けば彼女は自分の飼っている猫のためにも、出来れば獣医さんに大切にしてもらえる飼い主でいたいというのです。

基本的にどの飼い主さんも大切にすると思うよ、と言った所、大切にはきっとしてくれるけど、自分は職業上のそういうのを越えて、好意を持つお客様はいる、恋愛的な問題ではなく、この人のためなら頑張ろう!と思う人はいる、だから、飼い主としてそう思われる人になりたいのだ、と言うのです。彼女は別業種の接客業なのですが、対人間である限りそれがないはずはないと断言していました。

では彼女の業種の場合、どういったお客さんが好かれるのか?と聞いたところ、しばし考えて「素直なお客さん」と言いました。

なるほど、提案やアドバイスを素直に含みなく受け入れてくれる、ということのようです。

けれどこれこそ、獣医側の個人意見が強く反映されるので、一概には言えません。

悩んでいると、昔の事をふと思い出しました。

hr

もう随分前の事ですが、就職して間もなくの時、歯が欠けたわんちゃんを診た事がありました。

その方は初診で、指名制だったその当時の病院で、なぜか私を指名して下さった方でした。

新卒でひたすら情熱だけで走っていた頃の私は、とても嬉しく思ったのを覚えています。

犬の上顎の後臼歯は、固いもの、例えば木の棒や蹄などをかむ子は欠けやすいのですが、その子もまさにそれでした。

そういうおもちゃで遊んでいませんか?とお聞きすると遊んでいます、というお答えが返ってきました。

幸い歯髄まで覗いていたのではないので、欠けて歯肉にぶら下がっている部分を切ってあげれば問題ないと思います、とお話しして診察を終えた後、お大事にと挨拶して診察室を出て行かれる時に、「先生、別の病院で診てもらって同じ診断をしてもらいました」とにっこりわらって一言、おっしゃいました。

実はセカンドオピニオンを希望されていたのです。

セカンドオピニオン希望と言って頂いても、基本的に診察の内容は全く変わりません。普通に最初から相談ですが、と言って下さって良かったのです。

試されたのかな?隠されたのかな?信頼されてなかったのかな?

その意図はなかったのかもしれませんが、その当時は就職したてだったので、そう感じては、ただただ、なんだか落ち込みました。

今なら、そうですか、じゃあ良かったです!と笑顔で返したのでしょうが、まだ青く純粋な頃でした。

信頼関係が出来ていなければ、治療に向き合う事は難しいな、と強く思った出来事でした。

hr

何か病気を持った状態で来て頂くのが当たり前の病院では、それまでにどういった治療を受け、どういったお薬を飲んでいたのか、どのような検査をした事があり、結果はどうであったのか、という事は本当に大切です。

今までに受けた治療や検査というのは、その子の大切な財産なのです。例え何年も前の血液検査であろうと、あるとないとでは全然違います。その検査が何の意図で、どうして行われたのか、という事もその結果で汲み取る事が出来るからです。

ですからそれを敢えて隠して、情報を伏せたまま診察を受ける、というのはあまりおすすめしません。

せっかくのその子の情報が伏せられてしまえば、同じ検査や治療を無駄に重ねる事になるかもしれないからです。人間では先ずあり得ない事です。

今思っている事を、率直に話してもらった方が、どの獣医さんでも診察しやすいのは間違いありません。 何をしたくて、何をしたくないのか、とうことはきちんと伝えて頂いた方がいいのです。 よかれと思って進めた検査や治療が、実際は既に行われていてはかばかしい効果を与えていない、という事もあり得るのですから。

腹を割って話す、とはよく言ったもので、治療という困難に立ち向かう時に、お互いが話しやすい関係でなければ、病気という敵に負けてしまいます。獣医師は倒すべき相手ではなく、協力して病と闘うサポーターなのです。

hr

「お互いに含みを持って探りあいながら一緒に戦っても決して勝率は良くないし、敵は病気という共通の敵だからね」 と話すと、そうだよね、と返ってきました。

「それってどの仕事にも言える事だよね、同じ仕事する時に真摯に向き合っていかないと、お互いのいい所が引き出せないもんね」

本当にそうだと思います。

ライバルなどとは違って、チームで戦う時にチームメイトを信頼できないのは悲しむべき事です。当然その仕事の質も落ちるでしょう。

「獣医さんに限らないってことか」

信頼関係を作り上げる事は、人間同士が何かを行う時になにより一番大切だな、と再確認したのでした。

2017-02-15

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