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マダニが媒介する危険な感染症が日本でも
マダニが媒介する危険な感染症が日本でも

今回はちょっと気になるマダニのお話を。
2月末に気になるニュースが報道されました。 TVでも放送されたので、ご存知の方も多いかもしれませんね。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスの国内分布調査結果(第二報)というのが、国立感染症研究所から出されて、その結果が衝撃的だったので、話題になったようです。

マダニ媒介性の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、2013年1月に国内の患者が初めて確認された新興ウイルス感染症です。中国では2011年に発見されましたが、もともと原因不明の病気を調査していて見つかったもので、もしかすると昔から病気は存在していたのかもしれません。

新興というのは「かつては知られていなかった、この20年間に新しく認識された感染症で、局地的に、あるいは国際的に公衆衛生上の問題となる感染症」とWHOによって定義され、 有名なものではラッサ熱、エボラ出血熱、重症急性呼吸器症候群(SARS)など、恐ろしい病気がこれでもかというほど出てきます。

驚くような致命率のSFTS

今回のマダニが媒介するSFTSは、日本では52人の発症が確認されており、そのうち21人が亡くなっています。(国立感染症研究所:2014年1月9日) 中国では、致命率が6-30%とされています。

西日本だけではない!患者が報告されていない地域でも、ウイルスを持っているマダニを確認

これまでに患者の発生した自治体は、九州・四国・中国・近畿地方の13県(兵庫、島根、岡山、広島、山口、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、宮崎及び鹿児島県)で、西日本に集中していました。

しかし今回の調査で、SFTSウイルス保有マダニは、 既に患者が確認されている地域(宮崎、鹿児島、徳島、愛媛、高知、岡山、島根、山口、兵庫県)だけではなく、 患者が報告されていない地域(三重、滋賀、京都、和歌山、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、栃木、群馬、岩手、宮城、北海道)においても確認されたのです。

そう、北陸、甲信越、関東、東北、北海道と、感染の報告はなくとも、感染源であるマダニは存在していると示されたわけです。 西日本に限らず全国区で感染リスクがあると判断しなければならないため、 大きく報道でも取り上げられたのだと思います。

ウイルスを持っているマダニに咬まれた動物はウイルスに感染してしまう

SFTSウイルス(SFTSV)が分布する地域では、マダニとマダニに吸血される動物との 間でSFTSVが循環・保持される仕組みが成立しています。

中国では、SFTSを媒介しているマダニは主にフタトゲチマダニとされ、また、ヤギ、ヒツジ、ウシ、イヌ等の動物が高い確率でウイルスの抗体を持っていることから、フタトゲチマダニとこれらの動物との間でウイルスが広がっていると考えられています。

一方、日本では、少なくともフタトゲチマダニとタカサゴキララマダニがSFTSを媒介すると考えられています。ウイルスが広がっている可能性のある動物としてシカ、イヌが疑われ調査されました。

動物はSFTSVに感染しても発症しないとされています。しかし感染すると抗体を作るため、感染しているかどうかは確認できます。

今回の調査では、この抗体を調べる調査がおこなわれ、イヌでは、検体が得られた地域(19自治体)のうち、九州(熊本、宮崎、鹿児島県)、四国(徳島、香川、愛媛、高知県)以外に、患者が報告されていない自治体(三重、富山、岐阜県)でも抗体を持っている動物が確認されました。一方、9自治体(沖縄、長崎、広島、滋賀、愛知、静岡、長野、新潟県、北海道)では陽性のイヌは みつからなかったそうです。

ペットについているマダニがウイルスを持っていれば、ヒトにも感染する可能性が

ヒトはSFTSVを保有するマダニに咬まれることで感染します。
大切なのは、STFSは犬にかまれてうつる狂犬病などとは違って、直接人にうつるのではなく、犬についてきたマダニに咬まれることで感染する可能性があるということです。
そしてSTFSウイルスを持ったマダニは実は近くにいるかもしれないということ。

飼育している犬や猫は、しっかりマダニ予防を
飼育している犬や猫は、しっかりマダニ予防を

春の陽気に浮かれそうですが、暖かくなったということは、 そう、ノミやマダニも活動期に入ったということです。

ノミは冬でも元気ですが、ダニたちは3月後半くらいから、一気に活気づいてきます。 そして草むらや道端で、感染の機会を今か今かと待っているのです。

書いておいてなんですが、想像すると、若干鳥肌が立ちました。 でも言い過ぎではなくて、本当のことです。

彼らからすれば、動物やヒトの血を吸うことは生きるため、産卵するために必要なことですから、皆必死で飛びついてきます。

マダニの外見からは、ウイルスを持っているか持っていないかは分かりませんから、 とにかくマダニに接触しない様にするしかないようです。

犬猫にはノミ・マダニの予防薬があります。 大切なご家族を守るためにも、飼い主の皆様には、しっかりお薬で予防することをお願いしたいと思います。

お薬には、飲み薬もあれば、つけるタイプの物もあります。 飲み薬の中にはフィラリアの予防薬と一緒になっているものもあります。

様々な種類がありますので、その子のあった予防薬を、今一度検討してみてくださいね。 どれがいいのかわからないという方はお気軽にご相談ください。 その子とご家族にあった予防薬を、一緒に選んでいきたいと思います。

2014-03-15

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