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外耳炎の季節
外耳炎の季節

梅雨入りしてしばらくたち、ようやくそれらしい天気が続くようになりました。

紫陽花の花も見頃を迎え、青々とした葉にのったりと蝸牛がはっている様は、何ともユーモラスで美しいものです。

傘と雨靴のお世話になるのもまた楽しいものです。水たまりを恐れずに踏み込むことができる長靴は、なぜか勇ましい気持ちになりますし、しっかりと掴んだ柄はまるで剣を握ったときのような、高揚感があります。

雨の日にいざ出陣!の気持ちになるのは、子供のときから変わらないので、精神的な成長も程度が知れるというものです。

垂れ耳のわんちゃんはご注意を
垂れ耳のわんちゃんはご注意を

さて、五月に入ってから食欲の低下と目鼻の痒みが主訴でやって来る動物達が増えていましたが、ようやく落ち着いてきました。

これからはおそらく外耳炎やホットスポットといった病気が増えてくることでしょう。

外耳炎は垂れ耳のわんちゃんには本当によく見られる病気で、ある日突然痛がったり、かゆがったりして気がつくこともあれば、あれ?なんだかくさいぞ?と臭いから気がつく場合もあります。

どちらの場合も耳を気にして後ろ足で掻くそぶりや、上手く耳をかけずに目の周りや耳の周りを傷つけてしまっている場合や、耳を床や飼い主さんの手のひらにこすりつけるような仕草がみられることがあります。

またトリミングに通っている場合は、トリマーさんからの指摘で気がつく場合も多いですね。 そっと耳の中をみて、赤かかったり、黒い耳あかがでていたり、くさい臭いがしていたりしたら、要注意です。

単純な細菌性外耳炎であれば、耳をきちんと洗浄し、点耳薬を使うと良化します。現在は一度使えば一週間は効くお薬もあるので、非常に治療が楽になりました。

またマラセチア性外耳炎であっても、これは茶から黒褐色のべったりとした耳あかと独特の酸っぱい臭いが特徴の外耳炎ですが、やはりきっちり洗浄し、適切なお薬を使うとよくなります。但し、マラセチアは酵母様真菌といって、カビの一種なので細菌性のものより治りづらく、繰り返しやすい特徴があります。

お薬もですがとにかく洗浄してマラセチアの数を減らすことが大切なので、少し大変ですがしばらく通院してきっちり洗うことが必要です。マラセチアは一個残っていたら、翌日にはすさまじい勢いで増殖するので、毎日のように耳をお家で洗っていても、同じようにすぐ耳あかがたまるという状況になります。

昨日も掃除したのに!!と思った場合は、この外耳炎である場合も……。

またアレルギーがベースの外耳炎は、耳あかの量は少ないのにやたらにかゆく、左右両方の耳が赤くなるのが特徴です。こちらは外用薬を使うこともありますし、飲み薬での痒み止めのお薬を使う方がよい場合もあります。

また耳ダニといわれるダニが奇生している場合もあります。これは黒褐色のぼろぼろとした耳あかがでて、やたらめったらかゆいものです。耳先をつまむと思わず後ろ足が耳をかくように動いてしまう程の痒みで、これは中で耳ダニといわれるミミヒゼンダニがごそごそと動き回り、オスとメスが揃えば繁殖までするので、居心地のいい居住区になっている状態です。

例え一匹しかいなくても耳の鼓膜の前で動き回るので、非常にストレスを感じます。これは駆虫薬でないと治りませんので、耳垢検査をして感染がはっきりしていれば、お薬をすぐに使います。

名前がにていますがイヌセンコウヒゼンダ二とは異なるダニで、強い強い痒みをだす疥癬とはまったく違う病気です。

悪化すると耳血種になります
悪化すると耳血種になります

じつは外耳炎を放置すると、耳介の部分に血と漿液がたまる、耳血腫という病気を起こすことがあるのです。

耳血腫は耳介軟骨という耳の中骨にあたる軟骨と、耳の皮膚の間に血と漿液がたまってしまう病気です。

見事にぷっくり膨らむので、見た目は中身のたっぷり詰まった餃子のように見えます。

これは痒みが長く続くことで、耳介を後ろ足で蹴ったり床に擦り付けることで、耳の血管が傷ついてしまうことで怒ります。

ですから大概の耳血腫は、長い間の耳の痒み、外耳炎が原因です。

たまに喧嘩や打撲などで外傷性に耳血腫になっている例がありますが、そういった場合は範囲が小さければ自動的に血液が吸収され、治癒します。

けれど慢性化した外耳炎から発生する耳血腫は、手術をしなければなりません。

一時的に血液を注射などで抜いて圧迫するやり方では、ほとんどが再発しそのうち耳自体が縮んで形が変わってしまいます。

また犬も猫も耳の周りに包帯などをすると、しきりに頭を振って外してしまいますし、もの凄く嫌がります。

なるべく本人の負担を小さく、確実に短時間で治すには、手術になります。 切開によってたまった血液などを排出し、くっついていたはずの耳介軟骨と皮膚の間にたまって、邪魔をしている結合組織を削り取り、皮膚と耳介軟骨を改めて密着するように縫っていきます。

もちろん全身麻酔です。地味に時間がかかる手術になります。

同時に外耳炎の治療を行います。ベースがアレルギーならばそちらの管理も行い、再発が無いようにしていきます。

術後の耳は大層痛々しい状況です。なれていない飼い主さんだと、ちょっと絶句してしまうほど生々しい傷になります。

もちろんゆっくりと治ってきますが、衝撃度はすさまじいです。

ちなみにイヌも猫もなります。手術法も変わりません。

わんちゃん、ねこちゃんの耳のチェックを!
わんちゃん、ねこちゃんの耳のチェックを!

そう、ただの外耳炎と侮るなかれ、大事になる場合もあるのです。

むしむし、じめじめする梅雨の季節は外耳炎シーズンです。

動物達の耳のチェックをぜひ、してみてください!

2017-06-30

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